蒸らす時間。2017/11/22 20:32



 
学生時代。友人が就活で内定を受けるのを見て、
自分の人生よく決断できるなあって感心した。 
「結局歯車だよ」という言葉を聞いて僕は
(自分しかできない仕事がしたい!)
手に職をつけたいと思い写真を選んだ。
 
以来ずっと写真を撮る仕事。
厳しい時期もあったし、今だって厳しい。
 
  
セルフブランディングは「自分をどう見せるか」
だけどそれ以前に「自分が何をしたいか」。
    
個人事業主って、自分のお店を出す感じ。
作りたいメニューだけじゃお客さんが増えない。
お店をつぶしたくないから
お客さんが喜びそうなメニューも作る。
気をつけないと何でも屋になっちゃうから
バランスが難しい。
  
何か一本、筋が通ってるとしたら
僕は自分が面白いと思う仕事だけやってきた。
お客さまのことを真摯に考える制作さんと
尊敬するスーパースタッフさんのいる現場で
すばらしい作品世界や表現と関わることができて
ついでに自分の生活を支えてくれる。
シアワセ。
 
  
ところが。
 
店を維持しようとすると、逆回転になりやすい。
毎月出ていくお金を計算してしまう。
始めたばかりは赤字続き。毎月増えて嫌になる。
せっかく揃えた機材を有効活用したい。
少しでも多く稼がなきゃ...当然そう思う。
 
ここでもし
とにかく来た仕事は手当たり次第受けて
頭を下げて仕事を取ってきたりすると
そのうち「早い、安い、そこそこうまい」
歯車と同じ扱いになってしまう。
 
目的のための手段、のはずが
手段のための目的になってしまうと
ブランディングも何も無くなって
よそと区別つきにくくなってしまう。
 
 
 
色を出そうとするのでなく
色が出るのをしばらく待つ
 
お湯を入れてしばらく蒸らすように
おいしいお茶は時間がかかる
 
だけど。
あとから考えると、そんなの
ほんのちょっぴりの時間だ。
  
 
お店も旅も人生も
待つ時間が育ててくれるんじゃないかな。
いつのまにか色がついて味が出て
透明なお湯が、おいしいお茶に変わる。
 
そのとき、勝手に差別化できている。
セルフブランディングは自分の目の前じゃなく
少し遠くの誰かの前にあるみたい。
 
 
 
———
 
フィルムを現像するとき、
現像液の温度や現像時間に注意します。
液温が0.5度違っても、時間が15秒違っても
明らかな影響が出ます。
 
液温管理はこれからの冬場が難しい。
基本の20度で始めても10分経つと19度になってたり。
そこで20.5度で始めて19.5度で終わらせたり
気温が低いと撹拌を少し強くしたり...
手首の感覚で覚えています。
 
湯ざましで適温にしたり
一煎、二煎で時間と温度を変えたり...
おいしいお茶をいれるのも、
似たような感覚だなあと思います。

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